不真面目かしら?
新年あけて早々、まずいことに気づいた。友人たちからちらほら〈今年はこんなことに気をつけてみるつもり…〉などの新年の抱負が届き、じゃあ私は? 私はどんな年にしよう…とつらつら…つらつら考えるが、中々コレ!!というのが具体的に出てこない。え!? 私、〈欲〉がなくなってきてる―!??こりゃあ、一大事だわ。
ということで、近々Parisにやって来るという知人に本を数冊頼む。気の抜けたコーラのごとく、すっかり砂糖水と化した精神にパンチを入れるべく、今回はパンク・エスプリ特集。中には一冊、すでに読んだものも。いわく〈ふしだらかしら?老嬢ジェーンのセックスとロマンをめぐる冒険〉、出国前に神戸の図書館で読んだやつ。タイトル通り、御年67歳のジェーンによる実話なんだけれど、かなり面白かった(はず)。読んだ当初、ネット検索したところ、確か読者の反応はイマイチ―というより、〈共感できない〉という声が圧倒的だったような。〈老女だけれどセックスがしたい〉という筆者ジェーンの行動(雑誌にその旨の広告を出す―つまり相手を募集するってこと!)だけに重きを置いて読むならば、まぁそのような感想もいたしかたないのかもしれないが、それでも年齢を公表した上で〈求ム・肉体関係〉なんて目玉が飛び出すような募集をかけるのが文芸誌というところがミソ。つまりはミス・ジェーン、文学好きのインテリなのだ。だからこそ彼女の冒険譚、単なる〈性開放物語〉ではなく、〈精神解放物語〉としても楽しめる…とまぁ、もう一度読み返してみよう。あとは未読のギャリコによる児童文学〈ハリスおばさんパリに行く〉なんてのも頼んでみた。こちらはロンドンの街で掃除婦として朝から晩まで働くハリスおばさんが、ディオールのドレスにひと目惚れ。大好きな煙草や映画を我慢し一生懸命お金をためて、パリにドレスを買いに行く―というお話らしい。仮に手に入ったとしても、恐らく着る機会すらないだろうドレス。ああ、憧れってすばらしい。そうだ、〈夢〉なんていうから、ことがややこしくなるのだ。本来うっとりとうつくしいはずの〈夢〉ということばも、近年短絡的自己実現の手垢がつきすぎて、耳にタコ。(かく言う私も…!)〈夢〉なんて大それた旗を仰々しく掲げなくとも、ただ軽やかに熱く、何かに〈憧れて〉生きられれば、それだけで充分に人生は味わい深く、素敵なんだ…。
もう一度、芯から快楽を味わいたいと願う67歳。着る当てのないオートクチュールを手に入れようとはじめての飛行機に飛び乗る掃除婦。私はこの手のちょっとパンクな物語にしびれる。まっすぐに伸びたきれいな一本道を静かに散策するのもいいけれど、曲がりくねった道をさらに斜めに横切り、時折派手に転んだりしながら、それでもしつこく〈私〉にしがみつき、タップを踏んでるような人に出会うとドキドキする。そう、今の私には〈ドキドキ〉という憧れが足りないのだ。ローランとの暮らしがあまりにたおやかでやさしく、この愛すべき日々には心の底から感謝しているし、決して手放すつもりはないけれど、自らの精神にちょっぴり〈甘やかな刺激剤〉を注入したい。丸くなるのは顔とお腹だけで結構(笑)頭の中はぴかぴか、かすかに尖っているくらいでちょうどいい。
追伸:〈老嬢〉なんてタイトルがついてるけれど、ジェーンもハリスも実際、そう遠い未来じゃないのよね!?下は現在、描きかけの作品。中々進まない!!
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2019.01.08 12:26