ある助言

わたしが非常に好かれる人種のひとつに「信者」がいる。

わたしが好きなんじゃなくて(いや、他宗教や他人の生き方を否定しない限り、

基本的にどの宗教も本人がそれで救われるならOKというスタンスですが…!)、

向こうから好かれるのである。

子供のころからなぜかあらゆる宗派によく声を掛けられる。

迷える子羊に見えるのかしら…??いやいや、見えない。間違っても見えない。

一度、やはり街を歩いていて ”ちょっといいですか…” と

その道の方から声をかけられ、丁重にお断りした後で訊いてみた。

なぜ、わたしなのか?

答えは「どんな話も一応は耳を傾けてくれそう」

だから、これはわたしの長所と呼んでいいのだろう、たぶん!!


あれはある日曜の夕暮れ、秋の神戸ー。

近所のスーパーからの帰り道、

お寺の前におばあさんがひとり、心もとなさそうに佇んでいる。

冷たい風がさっと通り過ぎる。街はうっすらと暮れかかって、何処からかカラスの鳴く声。

秋の夕暮れってただでさえ寂しい。

皺の刻まれた手にはひらひらと紙切れ一枚。

あらら…道に迷いはったんか??

「どうされました…?」

「あのぅ…」

おばあさんがおずおずと紙切れをわたしに差し出す。

見ると…

A4サイズの紙のてっぺんに威風堂々と「天照大神」の文字!

むかし新聞の折り込み広告に入っていた、

地元スーパーのチラシを彷彿とさせる、見事な手書き文書である。

びっしり書けるだけ書きました!といわんばかりに、怪しげな文言満載。

さらには天照大神と冒頭で謳っておきながら、

なぜか下の方には拙いイラストでお姫様みたいなのんが描かれてあって、

その横に「マリア様の愛」…

あ、来たか…。

「すみません、わたしは興味ないですわ~」と、いたってにこやかに感じよく、

そそくさと踵を返したわたしのその背中に向かって、

その時ばあさんがこう叫んだのである。

「お姉さ~~ん!!あなた、”ひとりで生きてる!”って顔、してはりますけどね~え、

 たまには神さんのことも考えてくださいね~~!!!」

えぇ…!!!???

ばあさん、あなた何見抜いたんですか??と、苦笑いしながらも

律儀に手を振ってみせるわたしは、ばあさんが思うよりずっと、

”ひとと生きる”ことを信じているのである。今もむかしも。


ひと恋しくなる季節がやってきました。

おばあさん、元気かな。




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